第11回 荷物の話


 

人生とは重い荷物を背負って、一歩一歩坂道をのぼるようなものだのう

 

徳川家康は三方ヶ原(みかたがはら)の戦いを前にこう言ったそうです。

敵は戦国最強の武田軍団。

 

万に一つも勝ち目はない。

 

しかし、家康は逃げる選択は出来ません。

 

家族、家臣、領土、領民、城、織田との同盟。

 

守らなくてはならないものが沢山ある。

 

自分の背負っているもの。

 

どんな苦境でも捨てることは出来ない大切なもの達。

 

この、なんとも苦しい状況を例えて、

 

「人生とは重い荷物を背負って、坂道をのぼるようなものだ」

 

と、家康は言ったのです。

 

 

徳川家康ほどではないにしろ、我々も様々なものを背負って生きています。

 

仏教では「自分の荷物はなるべく少なくして、心を身軽に生きましょう」というのが、一つの教えとしてあります。

 

よけいな荷物はなるべく背負わない。

 

よけいな荷物など、苦しみの元です。

 

例えばニュースやワイドショーを見て一喜一憂する、これはわりかし荷物です。

 

芸能人のゴシップや、世界大統領の発言など、我々にはほとんど関係ありません。そんなものに流されて自分の荷物として背負うのは止めましょう

 

あれが悪い!

 

これが悪い!

 

とんでもないことだ!

 

自分が何とかしないと!

 

――このように、テレビや新聞を見ているだけで、どんどん荷物が増える人もいます。

 

「こんなものは自分の背負う荷物ではない!」と、理解して、冷静に判断しなければなりません。

 

我々人間はただでさえ多くのものを背負って生きています。

 

このうえで、さらによけいな荷物をどんどん増やしていると、重さに耐えきれず、本当に大切なもの、重要なものを背負っていられなくなります。

 

家族や友人、仕事など、本当に大切なものを考え、最優先に背負うようにしましょう。

 

よけいな荷物は背負わないことです。

 

 

出家とは本来、全ての荷物を捨てて修行に励むことを言います。

 

家族や家などすべて捨て去って身軽になる。僧侶のあるべき姿です。

 

しかし、他人が重そうな荷物を持っていたら、手伝ってあげることも大切なのです。

 

あえて他人の荷物を背負って上げるやさしさ、「慈悲の心」を忘れてはなりません。

 

よけいな荷物は増やさない。

 

しかし、無理しない程度に他人の荷物も手伝ってあげる。

 

大乗仏教とは本当に難しいものです。

 

「荷物を捨てて生きる事を智慧といい、あえて背負って生きる事を慈悲という」

 

荷物を捨てるだけでなく、楽しんで荷物を背負っても行けるーーそういう心を持ちたいものです。

 

 

 

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