【風の話】


 

むかし中国の修行道場では、老師の講座が行われる日は、合図として山門に旗を立てていたそうです。

 

ある時、その旗がパタパタと風に揺らぐのを見て、二人の僧侶が議論を始めました。

 

一人の僧は「旗が動いている」と言い、もう一人の僧は「風が動いている」と言うのです。

 

二人はどちらも自分の意見をゆずらず、議論は終わりそうにありません。

 

「動くのは風ではない旗だ!」

「いや、旗が動いているのではない!風が動いているのだ!」

 

そんな二人のやり取りを見ていた臨済宗第六祖である慧能禅師は、争う二人にこう言いました。

 

「風が動くにあらず、旗が動くにあらず、お前たちの心が動いているのだ」

 

 

◇ 

 

 

たいへん禅宗らしいエピソードです。

 

トンチが効いているようで難しそうな話ですが、深く考える必要はありません。

 

この話から分かることは「私たちの心もまた、風や旗のようにぴゅーぴゅー、パタパタ動くのだ」ということです。

 

 

私たちの心はとても動きやすいのです。

 

「影響」という風が吹けばすぐにふらふら動いてしまいます。

 

あっちへふらふら、こっちへふらふら。

 

不安だなあ、どうしよう。

怖ろしいな、やめておこう。

苦しいなあ、辛いなあ。

悲しいなあ、うれしいなあ。

 

心を動かす風に、負けない心を持たなければなりません。

 

不動の心を持たなければなりません。

 

 

 

 

八風吹不動(はっぷうふけどもどうぜず)という禅語があります。

 

八つの風とは、

 

利・衰・毀・誉・称・譏・苦・楽です。

 

(り)利益を得る。

 

(すい)損をする。

 

(き)陰で悪く言われる。

 

(よ)陰でほめられる。

 

(しょう)表だってほめられる。

 

(き)面と向かってけなされる

 

(く)苦厄によって苦しむ。

 

(らく)楽しくて楽しくて喜ばしい。

 

 

自分を傷つけられることだけでなく、楽しいことや、ほめられることもまた、仏教では心の風と呼んでいます。

 

「一喜一憂しすぎるな。浮かれすぎると足元すくわれますぞ」と教えてくれているのです。

 

 

人間が生きていく上で、様々な風が私たちの心を動かそうと吹きつけています。

 

今のコロナの騒ぎもそうです。いつ収束するのかという不安もそうです。

 

人間なので心が動かされることは仕方ありません。

 

しかし、動かされすぎないように、吹き飛ばされないように、注意しておかなければなりません。

 

 

もしも仏様だったらこのコロナ禍の現状、どうお過ごししていると思いますか?

 

なんとも動じていませんよ。

 

縁にしたがい、どっしり静かにいるだけです。

 

 

私たちも、この仏さまの心、不動の心を育てなければなりません。

 

どんな風にも動かない、強い心を作りましょう。

 

 

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