第5回 夢の話


 

東光寺の本堂には「覚夢殿(かくむでん)」という額が飾ってあります。

 

夢から覚める場所、という意味です。

 

夢から覚める、とはどういう意味でしょうか?

      

 

ーー過去は夢、未来は幻。

 

 

過ぎ去った過去は夢であり、まだ見ぬ先にある未来は蜃気楼のようにあやふやなものである。

 

過去も未来も「」というものに比べれば、とても儚(はかな)いものである。

 

 

覚夢殿の「夢」とは、この「過去」という意味も持っています。

 

過去は今さら変えることはできないし、動かすこともできません。過去とは自分にはどうにもならないものなのです。

 

昔あんなコトがあった。

とても悲しいコトがあった。

恥ずかしいコトがあった。

苦しいコトがあった。

 

そういう過去を引きずって過ごしても何にもなりません。

 

苦しいだけです。

 

ここに来たら「早く夢から目覚め、前を向きなさい」と、「過去にこだわるのは止めて、今を進みなさい」と、「覚夢殿」とはそういう意味なのです。

 

 

「目覚めよ」とは言っていますが、積極的に過去を捨てる必要はありません。

 

大切な過去は心にしっかり仕舞っておきましょう。

 

皆さんには過去よりも、もっと大切な、「」があります。

 

今日という日の、「」を大切にしてください。

 

過去は夢、未来は幻ですが、「」というものは確かに「」ここに、存在するのです。

 

後ろにある過去ではなく、先にある未来でもなく、目の前にある「」こそを大切にしてください。

 

過去の夢にも、未来の幻にも振り回されず、ひとつひとつ、一瞬一瞬を、大切に生きてもらえればと思います。

 

 

 

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